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執筆者の写真月吉野 若林醸造

甑倒しをして思うこと

先週、2022年度の日本酒の仕込みがやっと終わりました。甑倒しです。




今期は前年より増産し、極寒期のスケジュールに余裕を持たせた結果、仕込みの完了が4月の末までかかってしまいました。


数年前までは、ここ上田市は4月でも雪が降るくらい寒かったのですが、温暖化が進み現在は4月中旬頃からは気温が上がってしまいます。


若林醸造の蔵は昔のままの造りなので、当然冷房設備はなく、そんな中自然放冷で米を冷ますため、仕込みの状態が気温に大きく左右されます。

仕込み水を冷やしたり、タンクを冷やす設備はあるので、そういう物を使って目標品温で仕込みます。それに加えて、仕込む酒の種類でも対応しています。(酒の種類によって、仕込みの温度が違います。精米歩合が高いほど、仕込む温度は低いです。)



私が酒造りを始めた7年前は、製造量は少ないし、これから自分が月吉野を広めて行かなければ!との想いで始めたため、造りに対しても何か特徴を持たせたいと考えました。


自然放冷、全量槽搾りを選んだのはそれが目的で、その当時の蔵の規模に合っていたのと、とにかく綺麗なお酒を造りたかったから。

修行先の蔵をはじめ、多くの蔵は大吟醸クラスのお酒は小仕込みで蒸米は手で運び、自然放冷。蒸気で殺菌した米を清潔な状態で、かつ、運ぶ最中に潰れたり割れたりせず、良い状態で水麹と混ぜるためです。

また、普段薮田(ヤブタ)の圧搾機を使っていても、大吟醸だけ槽搾りにする蔵もあります。圧搾機が清潔な状態で搾るのと、一気に圧をかけすぎる事を防ぐためです。



以上から自然放冷、全量槽搾りにこだわりここまでやってきましたが、今季はふと頭の中に、

「薮田だったら搾りながら別の作業ができるな」などとよぎるようになりました。


私の選んだ造り方は、手間暇かけて丁寧に造る方法で、時間も人足も必要です。しかも、大量生産には不向きです。

ありがたいことに生産量が増えてきて、搾ったお酒をすぐに瓶詰めする事を徹底していると、どうしても仕込みと瓶詰めの予定が被ります。

さらにそこへ酒搾りや他の仕事が加わると、どうにも回りません。

しかも、若林醸造では果物ジュースの製造もしています。


機械をさらに買うのか、人員を増やすのか。

生産量を増やすには、どちらかが必要になりそうです。

しばらくは今の設備で頑張りますが、いずれ大きな決断をする時が来そうな気がします。



設備投資は製造業をしている限り常に必要ですが、何に投資をするのかを非常に悩んでいます。

少子化が進み、50年後は日本の人口が8700万人という推計が出ました。

コロナを境に行事が減り、飲酒習慣が減り、飲酒人口が減り、酒屋さんが減り…

物価が上がり、電気代が上がり、資材費が上がり、瓶などの原材料が手に入りにくくなり…

国内に良い兆しが見当たりません。


果たして若林醸造は酒蔵としてやっていくのだろうか?

ジュース工場になるのか?

それとも、全く別の事をしているのか。

どこかに買収されているのか、はたまた辞めてしまうのか。

未来はわかりません。


わかりませんが、自分が杜氏で頑張る間は、美味しいお酒を造る事と、何か新しい事を常に探しながら仕事していきたいです。



とりあえず、今年の夏は蔵の中を大改装予定です!古いタンクを出したり、配置変えしたりします。新しいタンクも購入します。



最後に、直近の良い話題としては、輸出用のMoonbloomSakeの販路がじわじわ増えている事や、現在お取り扱い頂いている酒屋さんのお陰でつきよしのの生酒在庫が既に完売してしまっている事。また、六角精児さんのお陰でお店に来てくれる方が連日絶えない事です。テレビって凄いです。

(娘が元気にスクスク育ってくれている事も。5月で10か月になります。)



甑倒しを迎えて安心しましたが、まだ醪を3本育てておりますし、甘酒の麹造りも続きますので、気を緩めず頑張ります。

今月下旬には、4年ぶりの新酒会も催されます。満員御礼です。

ご参加される方々には、体調を整え万全の状態をお願い致します!



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