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執筆者の写真月吉野 若林醸造

怒りは原動力となる

酒蔵では新酒ができたタイミングで、軒先に杉玉を飾ります。


最初は緑色をしていて、月日が経つにつれて茶色へと色が変わっていくので、「杉玉の色は日本酒の熟成の進み具合を表す」と言う人もいます。


元々酒造りに杉は必要不可欠なもので、麹を造る道具や、麹を造る部屋、醪を入れる桶など、杉を使って作られている物が数多くあります。


杉には防臭効果、調湿能力、蓄熱効果、殺菌効果があるので、そういった理由で好んで使われてきたようです。


麹室で蒸米を扱っていると、杉の調湿能力に驚きます。


蒸米から大量に出る湯気を吸って外へ逃し、部屋の中を適温に保ってくれる様子が目で見て分かります。



その「杉」を使って酒屋のシンボルである「杉玉」を作るのですが、若林醸造では杉玉を毎年業者から購入していました。


今年も例年通り購入し、新酒発売と同時に飾ろうと準備をしていました。


いざ飾ろうと、日陰から出してきたら、


杉玉が緑じゃない。


ん?


もう茶色になってる!?


杉玉の色が、緑じゃないんです。


買って届いた時は緑でしたが、1週間でまだらに茶色になってしまい、これではあっという間に茶一色になってしまいそう。


せめて冬の間は緑色じゃないと、一年間飾るものなのに困る!


そう思い、業者に問い合わせました。


すると、

「11月の異常気象の影響で、納品した杉玉は変色が早いんです」

「対応は何もできません」

との返答。



「わかりました」と言って電話を切りました。




・・・


じゃあ自分で作る!!!(怒)





というわけで、自分で杉玉を作ることにしました。


出来上がるまでは買った杉玉を飾っておきたいけど、緑じゃない杉玉は困るので、仕方なく緑のスプレーをしました。


そうしたら、こんな色に…(°▽°)




クリスマスツリーみたいで良いかもしれませんが、色が不自然…。


しかも、飾った直後に店舗へお買い物に来たおじいちゃんに、

「これは色を塗ってるだか?(・∀・)」

と即バレ。




それでは、腱鞘炎で手を痛めながら、酒造りの合間に作った杉玉の製造過程をご覧ください。



まずは昨年飾っておいた杉玉の解体作業。




全ての杉の葉を取ったら、丸い網が出現。

これがあれば、あとは杉の葉を集めてくるだけ。




植木屋さんに蔵の敷地内に生えている杉の葉を集めてきてもらい、いざ杉玉作り。

(植木屋さんがいなかったら多分作るのを諦めていた。作るより、葉っぱ集めが1番大変だと思う。)




生花のように杉の葉を差したり、切ったり。






まだまだ隙間はありますが、なんとなくできたから、あとは周りを切って整えます。


しかし、手が痛すぎて&余裕のある時間がもうなく、綺麗に丸刈りにはできず。



丸1日で完成させ、無事、軒先に飾りました↓




杉玉と私( ^ω^ )



(道具不足と腱鞘炎のせいで)綺麗に丸くはできませんでしたが、誰がどう見ても緑!💚



あまり葉先をカットしなかったので、比較的長く緑色を楽しめるでしょう…



というわけで、今年の杉玉は無造作ヘアーのような可愛い形となっておりますが、杜氏自作の愛着のあるものとなりました。


来年はきちんと道具を揃えて、今年より綺麗に作りたいと思います。




こんな事がなければ自分で杉玉を作ろうなんて思わなかったので、良いきっかけをもらえたなぁと心を落ち着けました。



新酒は発売中で、12月には辛口の無濾過生原酒が発売されます。



店頭へお越しの際は、ボサボサの杉玉を是非眺めていってください。



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